万有引力 実験公演 五月の鷹~北は南の反対ではない~ (1998)
1998年5月26日~31日演劇実験室◉万有引力実験公演として
作・演出:根本豊音楽:J・A・シーザー他
出演・万有引力俳優陣他で下北沢「劇」小劇場で上演された。
千穐楽は急遽追加公演を上演し、好評を博した作品。
記録用のビデオで画質は劣るが当時の雰囲気は伝わると思います。
◉この「五月の鷹~北は南の反対ではない~」は、個々の価値観と倫理基準なるものへの大いなる質問が主題である。現代文明の病とも言われる、人間の画一化・孤立化への流れと「内面の神話の崇拝」。
一体「個」とは「人間」とは何であるか。又、善と悪、正と負、白か黒かといった二元的思考に陥りがちな、人間の本能的なるものへ、疑問符を差し挟む。正に「北は南の反対では」ありえないのである。
憧れの「内なる極北の孤独」。
「極北の孤独」とは、北を目指す深淵の視線の永遠のブラックホールに他ならない。そこではすべての「夢」集合体である「虚体」を感じ、「自同律の不快」を自覚する。宇宙も夢を見るのである。
心臓を貫く熱い鋼鉄の一本の棒は、極北の磁力に引きつけられ、無意識の宇宙視線となり、我と我を取り巻く大暗黒をグルグルとかき回し・・・、磁場は狂い・・・。その遠心力と求心力は、知らず知らず意識下のもう一人の自己を巻き込み、突き進む。
◉具体的には十数シーンのシチュエーションと、南方憧憬の男の冒険譚から構成され、それぞれのシーンの色合いと深さ、個の内面を投影した台詞と、多少のキッチュな動き、同時代性を反映するような流れに収斂されていく。その舞台の裏側からは、奥深い程の人間の悲しみと孤独、そしてやがて可笑しさがしみじみと込み上げてくる仕組みである。
活力のある演劇と、人間の深淵が垣間見えてくる演劇、そして宇宙的広がりと、150億年の歴史観が同時に表現されるような舞台。いまだ誰も見たことも聞いたことも感じたこともない、未体験ゾーンへ観客をいざなう。
◉「五月の鷹」推進委員会・委員長根本豊
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